「子どもはじっと静かにしていられない。それを無理やりやらせているという意味では、ほとんど虐待ではないか」
——解剖学者・養老孟司先生の言葉です。
私は特進アカデミーで受験指導を、AIイノベ塾でクリエイター養成を行っています。AI教育を推進する立場でありながら、養老孟司先生の教育論には深く共感するものがあります。
なぜなら、AIを使いこなす力の土台は、実は「自然体験」にあると考えているからです。本記事では、養老先生の教育論をまとめながら、AI時代における教育の本質について考えてみたいと思います。
📑 この記事でわかること
- 養老孟司先生が提唱する「4つの世界」とは
- 現代の子どもたちが抱える「自然欠乏症候群」
- 「無意味なもの」に触れることの重要性
- AI時代だからこそ必要な教育の本質
🌿 養老孟司先生とは
養老孟司先生は、東京大学名誉教授で解剖学者として知られています。2003年に出版された『バカの壁』は400万部を超えるベストセラーとなり、社会現象を巻き起こしました。
近年は教育問題や環境問題にも積極的に発言され、2024年には『こどもを野に放て!』を出版。AI時代における子どもの教育について、独自の視点から警鐘を鳴らしています。
📚 養老孟司先生 主な著書
- 『バカの壁』(2003年)- 毎日出版文化賞特別賞
- 『子どもが心配』(2022年)
- 『こどもを野に放て!』(2024年)
🌍 人間が生きる「4つの世界」
養老先生は、人間が生きていく上で必要な世界は4つに分かれると説いています。
養老先生は指摘します。
「昔は世界の半分が自然で、あとの半分が人間関係だった。
現代人は自然がなく『人間関係だけ』になってしまった」
自然という「逃げ場」がなくなった結果、いじめによる自殺など、人間関係だけに追い詰められる子どもたちが増えているのです。
私が塾で子どもたちと接していて感じるのは、まさにこの「人間関係だけの世界」で生きている子が多いということ。学校の友人関係、SNSでの評価、親からの期待…すべてが「人からどう見られるか」に集約されています。だからこそ、自然という「意味のない世界」に触れる時間が必要なのです。
⚠️ 現代教育への警鐘:「静かに座らせる」は虐待?
養老先生の教育観で最も衝撃的なのは、現代の学校教育に対する批判です。
🚨 養老先生の指摘
「こどもはじっと静かにしていられない。それを無理やりやらせているという意味では、ほとんど『虐待』ではないか」
明治以来、日本の教育は「おとなしく座らせる」ことを基本としてきました。先生は、これは「こどもを集めて静かにさせておくのが楽だから」という大人の都合に過ぎないと喝破します。
さらに先生は、極端な提案をしています。
「学校はいわゆる『遊ぶ』ところにしてしまって、学業は家でやるということにしてしまった方がいいくらい」
これは「反転授業」の究極形とも言えます。知識の詰め込みは家でAIと一緒にやり、学校では友達と体を動かして遊ぶ——そんな未来の教育の姿を示唆しているのかもしれません。
🌲 「無意味なもの」に触れる重要性
養老先生は、子育てで最も大切なことをこう表現しています。
「無意味なものに
どれくらいつけておくか」
これが子育ての根本だと考えています
現代社会は「意味」や「効率」を追求するあまり、子どもたちから「無意味な時間」を奪っています。
🍃 自然は「無意味」の宝庫
自然の中には、テストに出ない知識、受験に役立たない体験、数値化できない感動がたくさんあります。
🌿 自然体験で得られるもの
- ✅ 五感の発達:風の匂い、土の感触、虫の声…
- ✅ 予測不能への適応力:天候の変化、生き物との遭遇
- ✅ 「思い通りにならない」体験:自然は人間の都合で動かない
- ✅ 「花鳥風月」の感性:言葉にできない美しさを感じる心
ヨーロッパでは「子どもの自然欠乏症候群」という言葉が使われるほど、自然体験の不足が問題視されています。
AIイノベ塾でクリエイティブな発想を教えていて気づくのは、「無意味な体験」をたくさんしてきた子ほど発想が豊かだということ。AIは「意味のあるデータ」からしか学べません。人間だけが「無意味なもの」から価値を見出せる。これこそが、AI時代に人間が持つべき最大の強みです。
🧒 「子どもは自然」という真理
養老先生は、大人と子どもは「根本的に異なる存在」だと主張します。
👶 子ども
- 「身体の世界」に属する
- 自然に近い存在
- 感覚で世界を理解する
- じっとしていられない
👨 大人
- 「脳の世界」に属する
- 都市・情報社会に適応
- 言葉と論理で理解する
- 効率と意味を求める
現代社会は「脳の世界」が圧倒的に優位になっています。テレビ、スマホ、パソコン…子どもたちはモニターを見て、おとなしくじっと座っている時間が増えました。
養老先生は言います。
「子どもは本来『自然』に近い存在。
だからこそ、自然の中に身を置くだけで、こどもたちは十分学んでいる」
🌳 「花鳥風月」で人生は楽になる
養老先生は、現代人が失った大切なものとして「花鳥風月」を挙げています。
🌸 「花鳥風月」とは
花を愛で、鳥の声を聴き、風を感じ、月を眺める——自然の美しさを感じ取る日本人の伝統的な感性のこと。「人の評価と関係がないところで、自分の好きなことを持つ」ことの象徴でもあります。
先生は「この感覚を心に持つことで、人生がとても楽になる」と強調します。
人間関係に疲れたとき、評価に押しつぶされそうなとき、自然という「意味を求めない世界」があることで、心のバランスを保てるのです。
🚀 AI時代だからこそ「外に連れ出す」
養老先生は、子育てで最も重要なことを端的にこう述べています。
「とにかく外に連れて行く」
習い事よりも、塾よりも、プログラミング教室よりも、まずは野山での自由な遊び。これが養老先生の一貫した主張です。
✅ 養老流・子育ての実践
- とにかく外に出す
→ 公園でも山でも川でも、自然がある場所へ - 目的を持たせない
→ 「何かを学ばせよう」と思わない - 口を出さない
→ 子どもの探索を見守る - 親も自然を楽しむ
→ 大人が楽しめば、子どもも自然と興味を持つ
「AIを教えているのに、自然体験を勧めるんですか?」とよく聞かれます。でも私は、AIを使いこなす土台は「身体感覚」にあると確信しています。AIが出す答えが「なんか違う」と感じる直感、プロンプトを工夫する創造性、AIの限界を見抜く洞察力——これらはすべて、豊かな実体験から生まれます。
📌 まとめ:子育ては「田んぼの手入れ」
養老先生は、子育てをこう例えています。
「子どもは自然。大人の思いどおりになんかならない。
子育ては田んぼの手入れのようなもの」
田んぼは、水を引き、雑草を抜き、害虫を防ぐ——努力・辛抱・根性で手入れを続けます。でも、稲自体を引っ張って伸ばすことはできません。手入れをすれば、子どもは勝手に育つのです。
養老孟司先生の教育論 まとめ
- 🌍 人間には「自然」と「人間関係」の両方の世界が必要
- ⚠️ 現代の子どもは「人間関係だけ」の世界に閉じ込められている
- 🌿 「無意味なもの」に触れる時間が子どもを育てる
- 🏃 子どもはじっとしていられないのが自然
- 🌸 「花鳥風月」の感性が人生を楽にする
- 🚀 とにかく外に連れ出すことが最も大切
AI時代だからこそ、
子どもたちを「野に放つ」ことから始めてみませんか?
参考文献・出典:
- 養老孟司『こどもを野に放て!』(集英社、2024年)
- 養老孟司『子どもが心配』(PHP研究所、2022年)
- 東洋経済オンライン「養老孟司×ヤマップ春山対談」
- 日本野外教育学会第27回大会 基調講演(2024年9月)
※本記事は2025年1月時点の情報に基づいています。